「寒梅」

 

皆さまにおかれましてはご健勝にて新年をお迎えのことと存じます。

さて、古来より愛され続けてきた花の一つに「寒梅かんばい」があります。

その凛とした美しい佇まいと、これから訪れる春の気配を感じさせる芳しい香りに多くの人々は魅了されてきました。

江戸時代前期の俳人で松尾芭蕉に師事し、特に優れた高弟の十人の一人に挙げられている服部はっとり嵐雪らんせつ(一六五四~一七〇七)は

 うめ一輪いちりん 一輪いちりんほどの暖かさ

と詠っています。厳しい寒さの中で可憐に咲く一輪の梅の花を見て、花のいのちが発する、ほんの僅かながら暖かさを感じ穏やかな気持ちとなったのでしょう。

私達は厳しい寒さの様に人生の中で苦境に立たされることや、辛さで心が押し潰されそうな事柄に直面することがあります。その様な時に他者から掛けられた「何気ない言葉」に癒され勇気付けられることや、温かさを感じほっと心が救われることがあります。

しかし、時に言葉は誰かを深く傷つける道具ともなる為、相手にとって「一輪ほどの暖かさ」を感じて貰える「思いやりの言葉」を心掛け、人と人との繋がりを大切に育んでゆきたいものです。