「仏性を見つめる」
一年が終わり、また新しい一年が始まります。
一年の終わり、十二月は師走ともいいますが、現代の世の中においてはいつも、誰もが慌ただしく毎日を過ごしていることでしょう。そんな日々の中で少し一休みをして、穏やかな時間を過ごすことができるのがお正月といえるかもしれません。
お正月は仏さまを最も身近に感じることのできる時ともいえるでしょう。たくさんの方がお寺に行き、新年のご参拝をされることでしょう。大覚寺では元旦より修正会の法会が執り行われ、国家の安泰、そして皆様の幸福を祈念しております。
日本には数限りない仏さまがおられます。目に見えるお姿で、あるいは姿形を変えて、私たちを導いてくださいます。そして私たち人間も実は仏さまになれるのです。
かつて京の都に疫病が蔓延する中、嵯峨天皇さまにお写経の功徳を説き、お導きになられたのはお大師さまです。お大師さまは、人のお姿のまま、仏となり、天皇さまをお助けし、多くの人々をお救いになられました。
お大師さまと同様に私たちはみな仏となる可能性、要素をその身の内に持って生まれています。その可能性、要素を仏教の言葉では仏性と申します。仏性は月に例えられます。月には時に雲がかかり、あるいは朝日が昇り、見えなくなることがあります。ですが月はいつも変わらずにあるのです。私たちの内にある仏性も煩悩や執着などの邪まな心で覆い隠され、見えなくなってしまっているのです。今一度、正しい見方を持ち、我が身、我が心を見つめなおすことで仏性は花開き、私たちはみな、仏さまとなることができます。
本年は午年であり、その守り本尊さまは勢至菩薩さまです。勢至菩薩さまの功徳とされる仏さまの智慧、真実の教えをいただき、皆様一人一人が仏さまとなり、人々を助け、幸福な一生をお過ごしいただきますようご祈念申し上げます。