燈籠とうろう

 

お盆には、ご先祖さまや、亡くなった家族が家に帰ってこられます。精霊棚を作り、盆提灯を軒先に吊るして御霊をお迎えします。そしてお坊さまをお招きして、懇ろに供養していただきます。細かい風習や習慣は地域によって異なり、また時代の変化と共に簡素化されている面もあるかもしれません。それでもやはり、お盆が特別な期間であることは変わることがないでしょう。

山梨に生まれ、高浜虚子に師事、「ホトトギス」の同人であり俳誌「雲母」を主宰した俳人、飯田蛇笏は、

 かりそめに 燈籠おくや 草の中

と詠いました。

燈籠流しの前、草むらの中に一時置かれた灯籠が照らし出す光景の中に、いまある命をくださったご先祖さまや、一緒に過ごした亡き家族の姿を浮かべ、お盆の別れを惜しんでいたのかもしれません。

私たちに与えられたこの命は、ご先祖さまから受け継がれた得難いものです。ご先祖さま一人ひとりの命の灯火が、私たちの心の中に灯されています。いま生きていることへの感謝の気持ちを忘れずに、自分に与えられた命の灯を輝かすことが恩に報いることとなるでしょう。