写仏の種類
秘鍵大師
大覚寺では「秘鍵大師」と呼ばれる特別なお姿の弘法大師像をおまつりしています。弘仁9年(818)の天下大疫の折、嵯峨天皇さまは般若心経を御浄写なされました。勅命(天皇による命令)を受けて弘法大師は、宮中において般若心経に込められた深く広大な真意を講讃(経文の意味を講義したたえること)されました。この講讃の結願を前に、疫病(伝染病など)に苦しむ人々は快復し、暗やみに閉ざされた世に再び日の光りが輝いたと伝えられております。この講讃の姿として表わされたのが「秘鍵大師」です。大覚寺の秘鍵大師のお姿は、右手に剣を持ち、大日如来の徳を示す日輪の円光を背にし、左手の数珠の房先が三鈷杵(密教法具の一つ、三平等の智慧を表す)と独鈷杵(密教法具の一つ、独一法界すなわち大日如来を表す)に描かれています。皆様に写していただく秘鍵大師御尊影は、大正14年に勅封心経殿再建落慶の折に作成された版木の刷本のお姿でございます。
薬師如来
大覚寺では、勅封般若心経を奉安しております心経殿の本尊として薬師如来をお祀りしております。また、嵯峨天皇さま御浄写の般若心経の見返し部分には、お妃の檀林皇后さまがお書きになられた薬師三尊像が描かれております。薬師如来は疾病(あらゆる病気)を治癒する医薬を与え、病苦を救ってくださる仏さまとしてよく知られているように、現世における御利益を一切衆生に与えることを誓願(仏・菩薩が自身の願望を誓うこと)とされる仏さまであります。東方浄土の瑠璃光浄土(東方にある薬師如来の浄土世界)に住し、東の空に日が昇るがごとく、浄瑠璃(瑠璃光浄土)の光りで私たちの希望に向うこころを呼び起こしてくださいます。平成30年、嵯峨天皇勅封宸翰(直筆)般若心経を開封した記念として複製復元された、嵯峨天皇の般若心経に見返しとして描かれた薬師如来のお姿でございます。
不動明王
真言密教では多くの仏さまを拝みます。仏として完成された如来さま、完成への途上にあり私たちに寄り添う菩薩さま、そして厳しく叱咤し激励してくださる明王さまなどです。その明王さまの代表といえるのが不動明王です。不動というは菩提心(清浄な仏の心)が堅固(固く、しっかりしている)にして動じないという意味です。この菩提心は私たち皆が本来的に備わっているのですが、それに気づけず迷い苦しみにさまよっています。だから激しい怒りの表情を示し、右手の剣で煩悩を断ち切り、左手の羂索(煩悩を縛り、滅すための縄)によって菩提へ導く道筋と働きを表しておられます。厳しい現実の中を、迷いを抱えながらも正しく生きていこうと願います。目標におられる如来さまや優しく手を差し伸べ一緒に歩んでくださる菩薩さまとともに、時に厳しく導いてくださる力強さも必要であります。大覚寺の本尊である五大明王の主尊である不動明王の尊像を描写したお姿であります。
愛染明王
愛染明王は忿怒(激しい怒り)の形相を表す明王さまの中で、不動明王と共に真言密教においてたいへん重要な仏さまであります。愛染明王はその姿も特徴的で、目が三つあり、六本の腕にはそれぞれ五鈷鈴(密教法具の一つ、音を鳴らし、その音を仏さまへの供養とする)・五鈷杵(真言行者の修法具として最も重要視され、煩悩を打ち砕く)・弓・矢(煩悩を射抜く弓と矢)・拳の中に宝珠(宝の玉)・未敷蓮華(花開く前の蓮華)を持ち、頭上には獅子の冠を頂き、身体も宝瓶の上にある蓮華座も、燃え盛る炎の日輪の光背も、そのすべてが真っ赤です。愛染という名前は「愛欲貪染」、つまり愛欲をむさぼり染まるという意味であります。そのむさぼり染め上げた世俗における愛欲を、仏の智慧の炎である智火によって浄め、六臂(6本の腕)の持物と様々な相が示す力によって昇華(高度な状態へ飛躍すること)され、愛欲は仏の智慧による働きとなるのです。これを「大愛」または「大欲」といいます。愛染明王のあふれ出る大愛が、私たちの心に染み入り、自我の邪欲が正しい方向へと導かれていくのです。大覚寺霊宝館に安置する愛染明王坐像を描写したお姿であります。
虚空蔵菩薩 ①
虚空蔵菩薩 ②
文殊菩薩 ①
文殊菩薩 ②
普賢菩薩 ①
普賢菩薩 ②
写仏の順序 筆ペン、椅子席もご用意しております。
① 用紙がずれないように置く。
② お願い事が叶うことを念じながら仏さまのお姿を丁寧に筆でなぞる。
③ 完成。ご宝前に奉納して焼香する。
【お問い合わせ】
〒616-8411 京都市右京区嵯峨大沢町4
大覚寺 教務部 教学課・五大堂
TEL:075-871-0071 ※9時〜16時30分