「れんげ」

 

「れんげ」の愛称で知られる蓮華草れんげそうは、雪解けの野原に可憐な花を咲き広げ、春の訪れを告げる風物詩の一つとして親しまれています。子供の頃に花飾りを作って遊んだ思い出がお有りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

後に結婚し、夫となる山口誓子やまぐちせいしより俳句の指導を受け、誓子の主宰する『天狼てんろう』で活躍した山口波津女やまぐちはつじょ(一九〇六~一九八五)は

 げんげ田に 大きな影や 風車

と詠っています。

風車が風に吹かれて力強く回転し、蓮華草が足元一面を赤紫色の絨毯に染める、農作が始まる麗らかな春の風景が目に浮かびます。

紫雲英げんげ」の別名でも知られるこの花は土を肥やす効果があり、かつては春の田畑を彩った後、そのまますき込んで耕して、肥沃な土壌にするために咲かせていました。

また「蓮華草」の名は仏教の象徴でもある蓮の花に似ていることが由来となっています。この花が田畑の土の肥やしとなり、植物の成長を支えるように、仏教には人生を豊かにする教えが一杯詰まっています。皆様も仏さまの教えに触れ、より豊かな心を育んでいただけると幸いです。