自心じしんを知る」

 

てつく冬もそろそろ終わりを迎え、春のきざしがあちらこちらで見られるようになってきました。

昨年(平成二十五年)流行りゅうこうしたものの一つに『アナと雪の女王』というディズニーのアニメ映画がありました。実は、一昨年の暮れに公開がはじまり、昨年は社会現象になるまでに人気が出た作品です。皆さんも何度も耳にしたと思いますが、この映画の主題歌の歌詞にこのようなフレーズがあります。

 “ありのままの姿見せるのよ ありのままの自分になるの”

原曲の英語の歌詞とは多少異なって訳されているようですが、とても印象に残る部分です。この中に何度も出てくる「ありのまま」という言葉ですが、本当、真実、などの意味になります。我慢していつわりの自分を演出せず、本来の自分の姿をそのまま見せ、そのことを心に決めて生きて行こう、という意味を持ったフレーズなのでしょう。

仏教では「如実知自心にょじつちじしん」という言葉に相当します。如実に自分の心を知ること、ありのままの自分の心を知るということです。『大日経だいにちきょう』というお経には次のように説かれています。

云何いかんが菩提ぼだいなるや。わく如実に自心を知るなり」

誰しも心の中に持っているみ仏の教え、それに気付くことができれば菩提をることができる、すなわちさとりを得ることができると記されています。しかし、私たちはそれに気付かず欲望と快楽に流されて、煩悩ぼんのうの雲で本来持っている菩提心をおおってしまっているのです。今一度、み仏の教えにのっとって人として正しい行いに勤め、煩悩の雲を取り去る努力をしてみましょう。

このお彼岸ひがん、地面からは土筆つくしが顔を出し、野山の木々にも花が咲いています。皆さんも菩提の心を咲かせられるように仏さま、ご先祖さまと向き合って、み仏の子である本当の自分、ありのままの自分を探してみてはいかがでしょう。