曼珠沙華まんじゅしゃげ

 

厳しい残暑が過ぎ、お彼岸の頃になると、田畑の畦やお寺の境内などで一斉に咲き渡る「曼殊沙華まんじゅしゃげ」。強く反り返る花弁が特徴的なこの花は「彼岸花」という名で親しまれ、季節の変わり目を教えてくれます。

高浜虚子たかはまきょしに師事し、後に「天狼てんろう」を創刊主宰した京都府出身の俳人山口誓子やまぐちせいし(一九〇一~一九九四)は、

 つきぬけて 天上てんじょうこん 曼珠沙華まんじゅしゃげ

うたっています。天上には突き抜けるように澄み切った青空が広がり、地上には鮮やかな赤色の曼珠沙華が咲き誇る光景が目に浮かびます。天上の紺と曼珠沙華の赤が対比的に表現されており、艶やかに彩る秋の季節を感じさせてくれます。

仏教で伝説上の天の花とされている曼珠沙華は、見る者の悪業あくごうを消滅させる働きがあると言われています。お彼岸は、ご先祖さまから脈々と続く命のつながりに感謝を捧げる機会であると共に、自身の心の有り様を見直し、私たちも彼岸(仏さまの世界)を目指す生き方を心掛ける機会でもあります。曼珠沙華の働きが皆様の心を清らかにし、仏道修行の助けとなり、安らかな毎日を過ごされますようご祈念申し上げます。