「芽吹き」
寒い冬もようやく過ぎ去り、暖かい春となりました。
春の陽光の下、多くの草花が芽吹き、そしてさまざまな花を咲かせている姿をそこかしこで見ることができます。
東京に生まれ、石田波郷に師事した俳人、小林康治は次のように詠いました。
草の芽の いまかがやくは 命かな
それぞれの草花が土の上へ芽を出したその光景に、命のかがやきを作者は感じ取ったのでありましょう。
草花はそれぞれが受け継いだ種から芽を延ばし、やがて、色とりどりのさまざまな花を春の陽光のもとに咲かせます。咲き満ちた草花の姿は、命かがやく美しさにあふれ、見るものの目を楽しませてくれます。また、花が咲いた後には種を落とし、さらなる命を伝えていくことになりましょう。
春は多くの物事のスタートとなる時期でもあります。小さな芽がやがて大輪の花となる命の不思議を観じながら、今一度、私たちも各々が本来持っている命の、一瞬一瞬のかがやきを見つめ直してはいかがでしょうか。