「新嵯峨野物語」第二十九話が、月刊「嵯峨」8月号に掲載されました。
冒頭一部をご紹介致します。
第二十九話「巡り合う二人の廃太子」
承和九年(八四二)八月、仁明帝が漏らした新たな皇太子の名があまりにも意外であったために、その情報はたちまち公卿の間に広がり、駆け付けてきたのは大納言藤原良房でした。
「主上。なぜ東宮は常康親王なのでしょうか。その理由をお聞かせください」
誰もが今上と良房の妹である順子との間に誕生している、第一皇子の道康親王が指名されると考えていたのに、今上が指名したのは良房の政敵といわれる紀名虎の娘で、更衣の種子を母とする親王なのです。我慢できるはずがありません。ところが今上は特に狼狽する様子もなく平然とお答えになられました。
「長幼の序に従うことは、大納言のいう政治の改革に沿わないことになるのではないか」
今上の精いっぱいの皮肉でした。
続きは月刊「嵯峨」8月号にて掲載しております。
月刊「嵯峨」の詳細はこちらから。