戊戌だより

黒沢全紹門跡猊下 宮中新年歌会始にご列席

戊戌4号_P02_A

平成28年1月14日宮中にて催された歌会始のようす

 新年の一月十四日は、後七日御修法の結願の日でもありましたが、この日、私たち大覚寺派と嵯峨御流華道関係者にとりましては、とても光栄な日となりました。それは、十数年ぶりに大覚寺門跡猊下が宮中歌会始において、ご列席の栄に浴されたことであります。

 私たち嵯峨御流華道では、皇室に縁深き大覚寺を総司所とする所以から、毎年、歌会の御題を花器としてお披露目申し上げる「御題花器」、また、「御題花」の発表を続けてまいりました。平成二十八年の御題は「人」であり、御題花器も「人」を表現して作られました。

 天皇陛下にあられましては「戦ひにあまたの人の失せしとふ島緑にて海に横たふ」と詠まれ、戦後七十年を迎える日本国をはじめ、世界で起こってきた戦争で多くの命が失われたことに心を痛められ、西太平洋のパラオを訪問なさったときのことを歌にされました。私たちも、後世における平和のあり方を考え、人々が互いに理解し合える世の中を創造しなくてはなりません。それはきっと代々の天皇さま、そして、私たちのご始祖・嵯峨天皇さまの御心にもあられたように、世の中の安泰を願い誠を尽くして浄写された御写経につながるのではないでしょうか。 

 また、皇后さまは「夕茜に入りゆく一機若き日の吾がごとく行く旅人やある」と詠まれ、夕空に飛行機を眺めながら、ご成婚前に旅されたことを思い出し、その飛行機には同じような若者が乗っているのだろうかと想像されたことを歌になされました。

 今回、私たちは勅封心経御開封の千二百年目という、たいへんありがたい節目を迎えます。永く伝わってきた歴史の紐を解き、なおかつ、多くの方にご縁を結んでいただけるようにしなくてはならないと日々、各関連機関と検討を重ねております。歌会始への陪聴参内を大きなご縁として、今後も皆さま方のご理解とご協力を切にお願い申し上げる次第であります。

戊戌4号_P02_C

嵯峨御流平成28年御題花器「人」