新嵯峨野物語
2017年7月の記事一覧

「新嵯峨野物語」第二十九話紹介

「新嵯峨野物語」第二十九話が、月刊「嵯峨」8月号に掲載されました。

冒頭一部をご紹介致します。

 

 

第二十九話「巡り合う二人の廃太子」

 承和九年(八四二)八月、仁明帝が漏らした新たな皇太子の名があまりにも意外であったために、その情報はたちまち公卿の間に広がり、駆け付けてきたのは大納言藤原良房でした。

 「主上。なぜ東宮は常康親王なのでしょうか。その理由をお聞かせください」

 誰もが今上と良房の妹である順子との間に誕生している、第一皇子の道康親王が指名されると考えていたのに、今上が指名したのは良房の政敵といわれる紀名虎の娘で、更衣の種子を母とする親王なのです。我慢できるはずがありません。ところが今上は特に狼狽する様子もなく平然とお答えになられました。

 「長幼の序に従うことは、大納言のいう政治の改革に沿わないことになるのではないか」

 今上の精いっぱいの皮肉でした。

 

 

続きは月刊「嵯峨」8月号にて掲載しております。

月刊「嵯峨」の詳細はこちらから。

「新嵯峨野物語」第二十八話紹介

「新嵯峨野物語」第二十八話が、月刊「嵯峨」7月号に掲載されました。

冒頭一部をご紹介致します。

第二十八話「さらば、夢追い人たち」

 承和八年(八四一)ともなると、仁明帝もすでに三十歳を越えていらっしゃるのですが、治国治政ということでは、次々起こる諸問題を処理していくには未熟な点が多すぎます。かつて困難を乗り越えるのに、有能な太政官を上手に使われた嵯峨太上天皇のように、人心の把握、統率ということで、卓越した力を発揮するようなことはできません。そんな中で時の経過と共に目立った存在になってきていた藤原氏は、次第に官衙での主導権を握るようになってきていたのです。政庁の微妙な変化に敏感な官人たちの中には、皇族を差し置いて何かにつけて指図をし始めてきている藤原氏には、徐々に不満を抱く者が増えつつありました。

続きは月刊「嵯峨」7月号にて掲載しております。

月刊「嵯峨」の詳細はこちらから。