新嵯峨野物語
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「新嵯峨野物語」第二十話紹介

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「新嵯峨野物語」第二十話が、月刊「嵯峨」11月号に掲載されました。

冒頭一部をご紹介致します。

第二十話 「法力合戦の裏で」

降り続く雪の中で弘仁十五年(八二四)改め天長元年の正月を迎えることになりました。早速ですが親交を重ねている渤海国からは、国家間の儀礼として使いを派遣してきましたので、淳和帝は大極殿にお出でになられて、使節をはじめ朝廷の高官たちの祝福を受けられ、紫宸殿では宴が催されて年号も天長とされたのです。いよいよ先帝の時代から、新たな治世に受け継がれたのだという、清新な気分が漂うなかでの年明けでした。それでも今上は使節に対して、「使人らは荒波を越え寒風を忘れて到来した。これまでの慣例に従い接遇しようと思うのであるが、年来諸国が稔らず百姓も疲弊している上に疾疫も発生した。これからようやく農時に入ろうとしており、送迎の百姓が苦しむことになるので、今回は京へ召さないことにした」(日本後紀)穏やかな所へ移ってもらって、いい風が吹くのを待って帰るようにと心遣いを表されます。しかし本はといえば、百姓たちが疲れ切っていることに対しての配慮の結果でした。民との苦しみを共有するという、嵯峨太上天皇の思いに共感する今上の気持ちがよく表れています。

続きは月刊「嵯峨」11月号にて掲載しております。

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