戊戌だより
2016年6月の記事一覧

黒沢全紹門跡猊下 宮中新年歌会始にご列席

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平成28年1月14日宮中にて催された歌会始のようす

 新年の一月十四日は、後七日御修法の結願の日でもありましたが、この日、私たち大覚寺派と嵯峨御流華道関係者にとりましては、とても光栄な日となりました。それは、十数年ぶりに大覚寺門跡猊下が宮中歌会始において、ご列席の栄に浴されたことであります。

 私たち嵯峨御流華道では、皇室に縁深き大覚寺を総司所とする所以から、毎年、歌会の御題を花器としてお披露目申し上げる「御題花器」、また、「御題花」の発表を続けてまいりました。平成二十八年の御題は「人」であり、御題花器も「人」を表現して作られました。

 天皇陛下にあられましては「戦ひにあまたの人の失せしとふ島緑にて海に横たふ」と詠まれ、戦後七十年を迎える日本国をはじめ、世界で起こってきた戦争で多くの命が失われたことに心を痛められ、西太平洋のパラオを訪問なさったときのことを歌にされました。私たちも、後世における平和のあり方を考え、人々が互いに理解し合える世の中を創造しなくてはなりません。それはきっと代々の天皇さま、そして、私たちのご始祖・嵯峨天皇さまの御心にもあられたように、世の中の安泰を願い誠を尽くして浄写された御写経につながるのではないでしょうか。 

 また、皇后さまは「夕茜に入りゆく一機若き日の吾がごとく行く旅人やある」と詠まれ、夕空に飛行機を眺めながら、ご成婚前に旅されたことを思い出し、その飛行機には同じような若者が乗っているのだろうかと想像されたことを歌になされました。

 今回、私たちは勅封心経御開封の千二百年目という、たいへんありがたい節目を迎えます。永く伝わってきた歴史の紐を解き、なおかつ、多くの方にご縁を結んでいただけるようにしなくてはならないと日々、各関連機関と検討を重ねております。歌会始への陪聴参内を大きなご縁として、今後も皆さま方のご理解とご協力を切にお願い申し上げる次第であります。

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嵯峨御流平成28年御題花器「人」

臨時(選定)宗会 黒沢全紹門跡猊下再任

「門跡候補者推薦委員会」が開催され、三師が候補者として推薦されることとなり、平成二十八年四月十八日に「臨時(選定)宗会」において門跡候補者推薦委員会で推薦された黒沢全紹師・村上宥真師・上井寛之師のうち、村上、上井両師から辞退届が提出されたことから、次期門跡に黒沢全紹師が選定されました。任期は平成三十二年七月十日までの四年間となります。

戊戌記念事業経過報告 その三

《 戊戌事業推進委員会のご報告 》

 平成二十八年二月十八日に「戊戌事業推進委員会」を開催させていただきました。これは、平成二十七年十二月二十二日に開催された参事会において「明智門」の損傷について危険性が指摘され、修復事業の必要性が協議されることとなり、その結果として戊戌事業への組み入れが承認されたことによります。

 ご周知の通り「明智門」は、京都亀岡にありました明智光秀公ゆかりのお城の移築建物として、かつては時代劇で奉行所入り口などとして撮影され、日本中に知られた建物です。長年の風雪の影響はもちろんですが、阪神淡路大震災以来の影響を蓄積し、地下では地下水脈の枯渇等により地盤が沈下し、現在は門そのものが傾斜し、中央部分の梁には目視できるひび割れが生じています。このままでは、中央から二つに折れ崩れてしまうことも考えられます。一年中宗団や、華道、関係者の通られる場所でもありますので、その重要性と緊急性を優先させて、戊戌事業への組み入れを協議し、かわりに当初予定の土塀修復については事業計画から削除し、歴史的価値を継続調査する方針となり、委員の全会一致で承認されました。

 明智門の修理費用につきましては、すでに宗団、華道、御用達組合等からは寄付金の奉納を賜っており追加は困難との判断から、大覚寺を訪れる参拝客、檀信徒、心経会々員、その他の方々からの浄財を広くお願いする方向です。しかしながら、各ご寺院檀信徒さまや華道門人の方の中で、協力しても良いとのお気持ちがあられます御方には、どうぞご協力の程お願い申し上げる次第でございます。

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梁中央部の亀裂

  6月号04_1_明智門改修工事安全祈願法会     戊戌4号_P05_C

      明智門改修工事 安全祈願法会        瓦が割れて、風により破片が参道へ落ちます